6月ハナアブしらべの報告

 6月のハナアブしらべは18日に今回初となる天水山付近で実施されました。これまでの調査地であったキョロロの森は標高300mほどの里山環境で当日は蒸し暑い日でしたが、天水山付近では標高が900mほどもあり、涼しさを感じられるほどで、キョロロの森では絶対に聞く事のできないエゾハルゼミも時折鳴いていました。終始うっすら曇りの天気でしたが、今回は11名の方にご参加いただき、ハナアブに限らず様々な昆虫と触れ合うことができました。

 今回の天水山付近での調査の結果、15種ものハナアブ科が採集されました。これは過去最多であった去年10月のハナブしらべの14種を超える種数となりました!今回採集されたもののうちクロハナアブ属の不明種は、これまで松之山で確認されたことのない種でした。採集された種は以下の通りです。

  • ①ケヒラタアブ 4♂1♀
  • ②ナミハナアブ 2♀
  • ③マツムラクロハナアブ 1♂
  • ④アリノスアブ 1♀
  • ⑤ミナミヒメヒラタアブ3♂4♀
  • ⑥ナガツヤヒラタアブ 1♀
  • ⑦キベリヒラタアブ 1♀
  • ⑧ナミホシヒラタアブ8♂
  • ⑨クロヒラタアブ1♀
  • ⑩キアシハラナガハナアブ1♂
  • ⑪クロハナアブ属の一種1♀ (松之山初確認)
  • ⑫ホソヒラタアブ1♂1♀
  • ⑬マガイヒラタアブ1♀
  • ⑭ニッポンクロハナアブ1♀
  • ⑮キアシマメヒラタアブ1♂

 また、今回得られた種のうち、①ケヒラタアブ、②ナミハナアブ、⑦キベリヒラタアブ、⑧ナミホシヒラタアブ、⑨クロヒラタアブはこれまで松之山で1個体しか得られていなかったものでした。一般的にはどれも珍しくはない種ですが、キョロロ周辺では個体数の少ない種である可能性が考えられます。⑨のクロヒラタアブはこれまでメス一個体のみが採取され、種の判別が不可能でしたが、事前調査でオスを確認していましたので、おそらく本種であると思われます。また、⑭ニッポンクロハナアブはキョロロ周辺では遅くとも5月中旬までしか成虫が見られませんが、山影に雪がまだ残り、餌となるフキノトウの花が咲いている天水山付近では、まだ本種を確認することができます。

 そして今回ハナアブよりも圧倒的な人気を誇った昆虫がいました。それはユキグニコルリクワガタという青~緑色の金属光沢をもつ小型のクワガタでした。この種はおよそ秋田県南部~長野県北部という限られた範囲の標高の高いところに生息していまして、成虫はブナの新芽を餌としているため、春~初夏の間しか見る事ができません。ある程度の標高の高いところを好むため、キョロロ周辺では見られません。一般的なクワガタのように大きな大あごはありませんが、「クワガタ」というネームバリューに加え、綺麗でおしゃれな姿に子供たちは夢中になりました(一時はルリクワしらべになりました…)。

 その他、花に集まるハナアブやハチに混じって面白い形をした別のアブがいたので紹介します(ハナアブ全体写真の「ハナアブ以外のハエ目」の左・中央)。それはセダカコガシラアブ属の一種で、このように背中が背面に突出しています。また口が非常に長く、花の蜜を吸うのに適しています。生態も変わっていて、幼虫はクモの体内に潜り込み寄生します。成虫は花に来るのでハナアブと間違えやすいかもしれません。

 このように環境を変えると生息している種が変わったり、同じ種でも個体数や発生時期が変わったりなど、新たな発見があります。7月にはまた違った生物に出会えることでしょう。

 ハナアブしらべは参加者とともに松之山に生息するハナアブ科を定期的に調査して貴重な自然資料として標本を残し、分類研究が十分ではない日本のハナアブ研究に貢献することを目的としたイベントです。研究が遅れている分、新発見に溢れたイベントです。次回も皆様のご参加をお待ちしております。今回ご参加いただいた皆様誠にありがとうございました!

6月の森のクモしらべのご報告

6月4日土曜日、キョロロの森に棲むクモを調べる市民協働調査、「森のクモしらべ」を開催しました。今回は参加者とともにキョロロの森をブナ林へ向かって散策しながら樹上や草の上落ち葉の上にいるクモを見つけて採集しました。
採集したクモはキョロロに戻ってから顕微鏡や虫眼鏡で種を調べました。その結果、未成熟のため種まで同定できないクモを含めて12科20属28種のクモ
を見つけることができました。


太い第一脚が特徴のイワワキアシブトヒメグモ(オス)


腹部に逆ハート型があるオオクマヤミイロオニグモ(メス)


四角い腹部と斑紋が特徴のカラフトオニグモ(メス)


緑色に輝くエゾアシナガグモ(メス)

今回の調査で確認できたクモ一覧
・ヒメグモ科: カニミジングモ、 ヤリグモ、バラギヒメグモ、イワワキアシブトヒメグモ
・コガネグモ科: オオクマヤミイロオニグモ、ヌサオニグモ、クマダギンナガゴミグモ、ヨツデゴミグモ、キザハシオニグモ、カラフトオニグモ
・アシナガグモ科: メガネドヨウグモ、
エゾアシナガグモ、コシロカネグモ
・サラグモ科: ヨツボシサラグモ、ヒメヨツボシサラグモ、ヤガスリサラグモ
・タナグモ科: クサグモ
・ハグモ科: ヒナハグモ
・コモリグモ科: ハタハリゲコモリグモ

・カニグモ科: コハナグモ、ワカバグモ
・ハエトリグモ科: マミジロハエトリ
この他にもヒメグモ科、タナグモ科、ウズグモ科、カニグモ科、フクログモ科、エビグモ科で上記の一覧にはないが未成熟のため種まで同定できないクモが見つかりました。

森のクモしらべは4月から11月の毎月第一土曜日に開催しています。次回は7月2日(土)の開催になります。今回は未成熟で同定できなかったクモや今回は採集できなかったクモも見つかることが期待できますので是非ご参加ください。

森のクモしらべ
【今後の開催日】7/2(土)、8/6(土)、9/3(土)、10/1(土)、11/5(土)
【集合時間】13:30
【集合場所】キョロロ
【参加料】無料

6月の花ごよみしらべ

6月11日(土)に6月の「花ごよみしらべ」を開催しました。今年の会場は松之山-黒倉の旧道です。
春に足元を彩っていた春植物はすでに結実し、里山は初夏の花々へと移り変わってきています。

タニウツギ
ハナバチの仲間といった訪花昆虫が訪れています。

ヒロハテンナンショウ

カキドオシ

ヤマウルシ

ミズキ


カラスビシャク

今年はいたるところでマイマイガの幼虫が見られます。
よく見てみると非常にカラフルで造形美にあふれる幼虫です。

今回は32種の開花した植物を記録しました。
5月に花をつけていた植物が結実していたり、花のつぼみが大きくなっている植物がいたりと、花の移ろいを感じながら初夏の里山を散策しました。次回は7月9日(土)の開催です。

\松之山の里山にはいつどんな花が咲くの?/
里山に咲く季節の植物を毎月調べる「花ごよみしらべ」を開催します。
今年は4月から10月まで松之山~黒倉ルートを中心に開催いたします。
咲く花々を観察しながら、一緒に楽しく里山を歩いてみましょう!

【開催日】毎月第2土曜日 ※4月は第3土曜
4月16日(土)、5月14日(土)、6月11日(土)、7月9日(土)、8月13日(土)、9月10日(土)、10月8日(土)、11月12日(土)
【時間】 13:30~16:00頃
【集合】13:00にキョロロ集合後移動します。
【会場】松之山~黒倉ルート
【参加費】無料
【定員】20名