2023年10月ハナアブしらべの活動報告

今年度は天気に恵まれ、これまで調査が中止になることはありませんでしたが、今回は終始雨で調査を断念しました。この時期は気温が低く、晴れでなければ昆虫の活性がかなり低くなるため、雨の中でのハナアブの採集は非常に困難でした。その代わり室内で、参加者の皆さまがハナアブを分類して標本を仕分ける機会としました。

 今回使用した標本は、今年度松之山で、主にハナアブしらべにより採集されたハナアブ科の標本152点です。これらは採集日ごとに並んでおり、種ごとにはまとまっていませんでした(青点線枠の位置にありました)。この標本のうち、まずは肉眼で見て、姿が似ていて同じ種と思われるもの同士を近くにおいていくという作業を、参加者同士で話し合いながら挑戦していただきました。参加者によって視点が違うため、「これとこれは似ているけど腹部の模様が違う」などそれぞれが気付いた違いを教え合って仕分けていました。最終的に仕分けられたものはおよそ7割程度は種ごとにまとまっていました。その後肉眼では見分けるのが難しいものを顕微鏡を通して観察していただきました。中には見た目がよく似ていても、属レベル(種よりも一つ大きいグループ)で違う種が混じることもありましたが、そんなに細かいところが見分けるポイントになるのかと、驚きや難しさを感じられていました。

 私もハナアブを本格的に勉強し始めたのはハナアブしらべを始めてからでしたので、初めは分からない事だらけでした。不思議なことに、このような観察を続けていくと、わざわざ顕微鏡を使わなくとも、口では説明が難しい全体的な形や模様の雰囲気の違いでより多くの種が見分けられるようになります。外で採集する際、その場でその種が分かればわかるほど採集が楽しくなり、その精度も研ぎ澄まされていくと思います。このような細部を顕微鏡で観察して種を調べていくという作業は、ハナアブに限らず生物を正確に同定する上でほぼ共通の方法ですので、ぜひ学んでいただきたい技術の一つです。

 次回のハナアブしらべは11月5日(日)13:30ー16:00に実施します。これまでは第3土曜日に実施していましたのでご注意ください。ここではまず今年度の成果についてのまとめを発表し、その後天気が良ければ採集に向かう予定です。

 今回雨でしたがご参加いただいた皆さまに感謝申し上げます。皆さまのご参加をお待ちしております。

連携企画展「学芸員・研究員が紹介したくてしかたがないスノウリッチ*とおかまち」

「森の学校」キョロロ・十日町市博物館(TOPPAKU)連携企画展「学芸員・研究員が紹介したくてしかたがないスノウリッチ*とおかまち」を開催します。キョロロとTOPPAKUの学芸員と研究員(計9名)が、日本遺産「究極の雪国とおかまち」の自然や文化について、それぞれの専門分野の視点でおススメするモノ・コトを写真やパネルを中心に紹介するミニ企画展です。

【会期】2023年10月21日(土)~2024年3月10日(日)
【展示見学ワークシート】
キョロロとTOPPAKU両館の展示を見学し完成を目指すワークシートです。ミュージアムで「探す」ことを楽しむビンゴタイプ、「考える」体験を通してキーワードの完成を目指す「謎解き」タイプの2種類。完成者にはプレゼントがあります。

■休館日
2023年11月30日(木)まで:火曜日
2023年12月1日(金)~2024年3月15日(金):火・水曜日
年末年始:2023年12月26日(火)~2024年1月1日(月) ※1月2・3日は開館
※祝日の場合は開館し、翌平日を閉館
▼「森の学校」キョロロ
▼十日町市博物館
▼日本遺産「究極の雪国とおかまち ー真説!豪雪地ものがたりー」スノウリッチツーリズム

秋の味覚を探そう!キノコ観察会

10月10日(月)にキョロロの森で見られるキノコを観察する自然体験イベント「キノコ観察会」を開催しました。観察会の講師は地元のキノコ名人である保坂清先生。毎年秋の定番イベントだけあって、参加者の中にはキョロロの研究員よりキノコに詳しいベテランも。講師、研究員、参加者でお互いに教え合いながら観察する会となりました。

野生のキノコは柔らかく繊細なのでビニール袋よりも籠を使った方が傷めずに採集できます。参加者各グループが買い物かごを持ってキョロロの森にキノコ探しに出発です!

観察会では食べられるキノコは勿論、食べるのに適さないキノコも採集してその特徴を学びます。今年の夏は雨が少なく地面が乾燥していたため、秋のキノコへの影響が心配でしたが、9月以降の雨のお陰で思った以上に多くのキノコを採集・観察することができました。

美しい紫色のムラサキアブラシメジモドキ。カサや柄が強い粘液で覆われているのが特徴です。こんなに派手でも可食のキノコです。

里山の秋の恵みはキノコだけではありません。むかご(自身のクローンを作るヤマイモの珠芽)やミツバアケビの実も見つけることができました。

特に多く採集できた可食のキノコはチチタケやチリメンチチタケ。チチタケの仲間は傷をつけるの白色の乳液を出すことが特徴です。チチタケとチリメンチチタケは可食ですが、チチタケの仲間には毒性が不明の種もいるのでご注意ください。
 

採集後はキョロロの森にある小屋の駐車場でキノコの鑑定会を行い、採集したキノコの特徴を学びました。一部の食べられるキノコはその場でバター炒めにして、舌でその特徴を学びました。加熱するととろとろになるマスタケや独特の歯ごたえのチチタケなど、里山の秋の恵みを見て、触って、味わって学ぶことができる観察会となりました。