【市民参加型生き物調査】カニムシしらべ【第1回報告】

本日は市民参加型生き物調査「カニムシしらべ」を初開催しました。定員いっぱい10名の皆さんにご参加いただき、ありがとうございました。カニムシはクモやサソリの仲間(鋏角類)です。体長は1~5mmほどと小さく、ハサミ状の触肢が特徴です。様々な環境に生息していますが、土のなかに暮らしている種類が多いかと思います。そんな小さくて地味なムシを狙って探すイベントは、日本中探してもなかなか見つからないでしょう。

「カニムシしらべ」では、土のなかに暮らすカニムシを調べます。園芸用ふるい、細筆、白いバット、小ビン、軍手があればカニムシを採集できます。最初に採り方をレクチャーした後、皆さんにそれぞれ探してもらいました。

落ち葉や土をふるいにかけて、白いバットのうえに色々な生き物をふるい落とします。葉っぱや土のカケラが混ざった中から、カニムシを探します。

カニムシが落ちていないか、目をこらして探しています。技術だけではなく、続ける根気や運も試される、地味で地道な採集です。

結果は、4種(計35個体)のカニムシがとれました!
・ヤマトツチカニムシ
・ニホンカブトツチカニムシ
・チビコケカニムシ属の未記載種
・モリヤドリカニムシ
(正確に名前を調べるにはプレパラート標本にする必要があるため、暫定的な結果です)

今回は2ヶ所で採集しましたが、砂利道沿いでは1種のみ(チビコケカニムシ属の未記載種)、ブナ林のなかでは全4種が採集されました。環境が変わると、採れる種類も変わってきます。


ヤマトツチカニムシ Allochthonius shintoisticus(オウギツチカニムシ科)


ニホンカブトツチカニムシ Mundochthoniusjaponicus‘(ツチカニムシ科)


チビコケカニムシ属の未記載種 Microbisium sp.(コケカニムシ科)


モリヤドリカニムシ Allochernes japonicus(ヤドリカニムシ科)

今回採れたカニムシの写真を載せてみましたが、違いが判るでしょうか…?みんな同じように見えるかもしれませんが、すべて別の科に属する全然違うカニムシたちです。
こんな地味な方法で地味なムシを採る「カニムシさがし」、また皆さんのご参加をお待ちしております!

【企画展特別企画第1弾!】舘野鴻さんトークショー&観察会(5月)

春季企画展「舘野鴻絵本原画展 うまれて しんで、-めぐる命のものがたり-」のスペシャル企画の第一弾として、5/6(土)に友の会会員向けの内覧会、5/7(日)にトークショー&観察会を開催しました。

5/6(土)の内覧会では、展示を企画した研究員から企画の意図や構成について説明を受けながら、舘野さんご本人からそれぞれの原画についてお話をいただきました。
それぞれの原画に込められたメッセージ、取材や制作の裏側、今後制作される絵本の構想などをお聞きすることができ、参加された皆様も非常に喜ばれていました。

5/7(日)のトークショー&観察会では、菌類の専門家である筑波大学菅平高原実験所 出川洋介先生をスペシャルゲストにお迎えし、舘野さんとフリーテーマでトークを繰り広げていただきました。
里山の自然、そこに暮らす生き物をはじめ、動物の死体に集まる生き物たち、雪の上に現れる不思議な昆虫や藻類・菌類にいたるまで、テーマはどんどん広がりお話に引き込まれます。
広い視点を持ち生き物の観察することで予想外の発見につながることや、最後は里山の自然の保全についてもいろいろな視点で捉えていく重要性について会場の皆さんと共有しました。


▲舘野鴻さん

▲出川先生

お昼休憩をはさみ、午後は観察会です。あいにくの小雨となりましたが、雨具や傘を差しながらキョロロの森に入りました。
桑の実に発生するキノコ、枯れ枝に発生した粘菌など、足元を探すだけでも驚きの連続!なかなか前に進めません(笑)



雨が強くなってきたため館内へ戻り、予め用意した標本や観察会で採集したサンプルを顕微鏡でじっくり観察しました。
採集したキノコにいるトビムシやダニ、粘菌の光沢、顕微鏡で見る世界にみなさん驚きの連続でした!




あっという間に時間は過ぎたトークショー&観察会。
次回は6/3(土)に昆虫はかせネットワーク 鈴木誠治さんをゲストに開催します。
皆様のご参加お待ちしております!

【市民参加型生き物しらべ】5月の森のクモしらべのご報告

5/6 (土)にキョロロの森に生息するクモを調べる市民参加型生き物調査イベント、「森のクモしらべ」を開催しました。調査前日までの予報では当日の午後から雨となっていましたが、幸運にも天候が回復し曇天ながらもしばしば日が差す過ごしやすい天候の元で調査を行うことができました。調査ルートはキョロロからキョロロの森の中のブナ林まで。ルート沿いの草本や低木を捕虫網でスイーピングしながらクモを採集しました。調査中はクモだけでなく、ギフチョウやシオヤトンボ、ニワハンミョウといった昆虫も多数見つけることができました。

今回の調査では12科 20 属 26 種のクモを見つけることができました。
今回の調査での最大の収穫はサラグモ科の Tusukuru 属というグループに属するクモが発見できたことです。Tusukuru 属はこれまでに世界で 2 種が記載されており、今回はロシアの沿岸地域や千島列島南部で分布が確認されている Tusukuru tamburinus ツスクル・タンブリヌスというクモが発見できました。このグループは北海道では確認出来ていないので、北海道以南の地域での新記録となります。体長約 1.3 mm のほぼ真っ黒なクモで、本調査に参加してくれた子供たちとそのご家族が見つけてくれました。ちなみに Tusukuru ツスクルはアイヌ語でシャーマンを意味する言葉に由来します。不思議な響きの言葉に負けないくらい奇妙な形をしたクモです。


Tusukuru tamburinus ツスクル・タンブリヌス♂の背面 (上) と側面 (下)。

本調査で発見したクモ【12科 20 属 26 種】
ウズグモ科
 1. ウズグモ科の一種 (未成熟)
タナグモ科
 2. クサグモ (未成熟)
コモリグモ科
 3. イナダハリゲコモリグモ (♀)
 4. ハタハリゲコモリグモ (♀♂)
 5. ウヅキコモリグモ (♀)
キシダグモ科
 6. アズマキシダグモ (未成熟)
 7. ハシリグモ属の一種 (未成熟)
ヒメグモ科
 8. ヤマトコノハグモ (♂)
 9. ヤリグモ (未成熟)
 10. ハガタグモ属の一種? (♂)※標本が損傷しており同定が難しい
 11. ヒメグモ科の一種 (未成熟)
サラグモ科
 12. ヤガスリサラグモ (♀♂)
 13. Tusukuru tamburinus (♂)
アシナガグモ科
 14. メガネドヨウグモ (未成熟)
 15. アシナガグモ (未成熟)
 16. ウロコアシナガグモ? (未成熟)
コガネグモ科
 17. カラオニグモ (未成熟)
 18. ナカムラオニグモ (♂)
 19. ムツボシオニグモ (未成熟)
カニグモ科
 20. トラフカニグモ (♂, 未成熟)
 21. コハナグモ (未成熟)
ネコグモ科
 22. ウラシマグモ属の一種 (未成熟)
フクログモ科
 23. フクログモ属の一種 (未成熟)
ハエトリグモ科
 24. マミジロハエトリ (未成熟)
 25. マガネアサヒハエトリ (♂)
 26. ヤマトハエトリグモ属の一種 (未成熟)

出現種写真(一部)。番号は上記リスト番号に対応。